北アルプスを擁する中部山岳国立公園内に立山カルデラがある。
立山カルデラは巨大な窪地で、カルデラ内には土砂が堆積している。
この土砂が崩壊・浸食されて流出するのを防ぐ目的で、砂防事業が行われている。
立山カルデラから流れ出す常願寺川上流部では砂防堰堤の整備などが行われている。
その砂防工事の資材や人員の輸送を目的として立山砂防軌道(立山砂防工事専用軌道)が敷設された。
歴史は古く、大正15年に工事を着手、昭和4年に起点の千寿ケ原~樺平間11.7kmが開通した。
その後昭和40年には水谷まで延伸、18kmが開通した。
立山砂防軌道は軌間が610㎜のナローゲージで、全長18kmの間に640mの高低差があり、標高を稼ぐために全線で42か所(当時)のスイッチバックがある。
特に昭和40年に開通した樺平~水谷間には18段のスイッチバックがあり圧巻だった。
列車はDLが無蓋貨車あるいは人車を牽く編成だった
スイッチバックの有効長が短いために(あるいは牽引定数の制約からか?)連結される車両は3~4両だった。
列車の編成が短かいので、何本かの列車を続行で運転して輸送量を確保していた。
また列車の合間を縫って連絡用のモーターカーも運転された。
路線の途中に何か所かの連絡所があって、列車の交換ができるようになっていた。
軌道は常願寺川に沿って敷かれてあり、崖をコの字型にくり抜いたオーバーハングや、本流に流れ込む急な流れの沢を跨ぐ橋梁などがあった。
常願寺川によって削られた深い谷に敷かれた軌道からの景色は圧巻だった。